お金をかけずに勉強しよう (1) MOOCとOCW
最近は新しいことを学ぶハードルが本当に低くなりました。
インターネット接続環境と視聴デバイス、あとは自分の学ぶ意欲さえあれば、いつでもどこでも世界最高水準の教育にアクセスすることができます。
しかも無料で。(もちろん通信費はかかりますが)
これは何の記事?
この記事では、僕が実際に使ったことのある海外サービスを中心に、無料(または低価格)で学ぶことができるWebサイトを2回に分けて紹介します。
基本的には英語なので、英語ができる方はぜひチャレンジしてみてください。
ただあんまり英語が得意じゃないという方でも、一部サービスは日本語版を提供していたり、日本語字幕をつけることもできます。
これから英語ができるようになりたいという方には、「英語を」学ぶコースが用意されているものもありますし、何より「英語で」学ぶということは英語力アップに面白いくらい効果があります。
ここで紹介するものはすべて基本無料か低価格のものなので、試しに受講してみようなんてことも気軽にできるかと思います。
もしかしたらちょっと覗いてみると今まで考えもしなかった気になるテーマが見つかって、人生が変わるなんてこともあるかもしれません。
ただ気をつけないとあれもこれも気になって結局全部中途半端なんていうことになってしまいますが。(自戒)
無料で学べる海外の学習マテリアル
学習サイトをカテゴライズする方法はいろいろあります。
扱っているテーマで分けることもできますし、営利非営利で分けることもできます。サービス運営主体や講座提供者による分類も可能ですね。
ただ、どの基準でもざっくり分けることはできても、明確な分類はなかなか難しいという面もあります。
そこでここでは、いわゆるMOOCと呼ばれるオンライン学習サービスに分類されるもの、OCWと呼ばれる大学が講義マテリアルを公開しているもの、最後にIT関連のサービスに分けて紹介していこうと思います。
今回は前編として、MOOCとOCWについて紹介します。
MOOC (Massive Open Online Course)
日本語だと大規模公開オンライン講座と訳されている、大学や企業が各プラットフォームで講座を提供して、誰でも基本的に無料で受講することのできるサービスです。
各講座にはその講座専用のページが用意されており、そこで講義動画の視聴、演習問題、資料のダウンロードなどができ、質問などがあればDiscussion Forumで講座のTA(ティーチングアシスタント)や他の受講者とやりとりができるようになっています。
自分のペースで進めることのできるものもあれば、きっちりとスケジュール通りに講義を視聴して講義内の問題を解かないといけないもの、さらに課題提出や試験を課されるものもあります。
課題の採点はコース提供者が行う(プログラミングや数式などは自動採点)こともあれば、受講者同士で互いに評価する(Peer review)形式のもの(例えば作文、デザインといった自由度の高いものなど)もあります。
また、試験はオンラインで受験しますが、厳しいものだとProctored examというオンラインの試験官に監視されながら受験するタイプのものもあります。
ちなみに無料だと試験は受けられないことが多いです。私の経験では全て有料でした。
希望すると修了証も発行してもらえますが、その場合もお金がかかることが多いです。
ProgramやCertificateといった名称で、系統だって学習できるようにコースをいくつかまとめたものも提供されています。
これらの中には、修了後に大学や大学院に進学した場合に実際に単位として認められるものもあり、いきなり進学を検討するのはハードルが高いという場合にとりあえず受講してみることで、進学してその分野をさらに極めたいとなった場合でも無駄にならない設計がなされています。
さらにedX, Coursera, FutureLearnなどでは学士や修士の学位をオンラインで取得可能なプログラムも用意されています。
これらはプログラムを提供している大学の正規の学位として認められるもので、海外の有名大学の学位を留学不要で自宅から取得できます。
もちろん誰でも受けられるわけではなく、当然通常の学位留学と同じように選考もありますし、学費もOn-campus(実際にキャンパスで講義を受ける通常のプログラム)に比べれば安いものの日本の大学と比べると割高です。
とはいえ日本での生活を維持しながら海外の学位プログラムに参加したいという方にとっては選択肢の一つになると思います。
edX
代表的なMOOCの一つで、基本的には大学などの教育機関が講座を提供しています。MITとHarvardによって2012年に設立されたサービスでこの2大学を含め4500以上のコースが受講可能です。
基本無料で受講できて、有料アップグレードで修了証の発行などができ、大学の単位取得が可能になるものもあります。
課金する場合は1コースいくらといった数え方になっています。
自分のペースで受講可能なものも多いですが、スケジュールが決まっているコースもちらほらあり、結構厳格な印象です。
Coursera
edXと並んで代表的なMOOCとして挙げられるのがCourseraです。こちらはStanfordの教員によって2012年に設立されました。
無料のものだけでも7500以上のコースが受講可能です。
edXと比べると、Google, Metaなど企業のコースが充実しているイメージがありますね。
スケジュールも間に合わなければ再設定可能だったりフレキシブルな印象です。
有料で受講する場合は、edXと違って月額料金になっています。そのため時間があるときに集中して取り組むとあまりお金をかけずに修了することも可能です。
極端な例で言うと、トライアル期間中に修了できれば無料で修了証の発行まですることが可能です。
また、Coursera Plusという講座受け放題+修了証取り放題のサービスも提供しています。
ただすべての講座が受け放題の対象というわけではありませんので注意が必要です。
たまにセールもやっており、半額程度で登録することもできます。
僕もある年の年始のセールで1年間だけCoursera Plusに入って色々な講座を受けたことがあります。(2年目はセール価格が使えなかったのでやめました。)
FutureLearn
edXとCourseraはアメリカの大学が中心となったサービスですが、Futurelearnはイギリスの大学が中心に講座を提供しています。
そのため、特に人文系の科目においてイギリスの言語や文化、歴史といった地域の特色を反映したものも学ぶことができます。
多くは無料で受けられますが、無料の場合はコースごとに指定された標準期間内しか受講できませんので、スケジュール管理をしっかりしていないと最後まで受けられません。
有料にするとスケジュールの制限はなくなり、修了証も取得できます。
課金は月額ではなく1コースごとが基本ですが、受講し放題のUnlimitedプランも提供しています。
こちらもたまにセールがあるので登録する場合はセールを狙いましょう。
Kadenze
Kadenzeは少し毛色の異なったサービスで、アートやデザインに関するコースを提供しています。
音楽+プログラミングなど他のMOOCではあまり見られない面白いコースもあるので、そういった方面に興味のある方は覗いてみると楽しめるかもしれません。
ただ無料のコースはあまり多くない印象です。(昔はもっとあった気がするのですが、気のせいかもしれません。)
検索機能も今ひとつで、無料のコースの一覧を出すことができず、無料コースで興味を引くものがあるかどうかみてみたいという調べ方には不便です。
何か学びたいテーマがあって検索した結果無料のコースがあればラッキーといった使い方になりそうですね。
Udemy
Udemyは上記のように大学や企業の提供する講座が中心ではなく、誰でも講師として講座を提供できるサービスです。
そのためアカデミックな内容ではないものも多数存在しており、本当に幅広いテーマで講座を探すことができます。
edXやCourseraはやや情報が古くなりがちなので、最新の話題などは素早く情報を発信している講師が多いUdemyで探す方が見つかりやすいです。
一方で講座のクオリティもピンキリなのでそこは注意しないといけません。
また、たまに無料のものもありますが基本的には有料です。
ただ頻繁にセールをやっており、1200-1500円くらいで購入できることが多いので定価で買うのはお勧めしません。
大体の講座はセールの時期に同じ値段まで値下げしていますが、値下げしないものも中にはあります。
日本ではベネッセが提携して運営していて日本語の講座も徐々に充実してきてはいますが、やはり英語で調べた方が目的に合ったものが見つかる可能性が高いですね
OCW (Open Course Ware)
OCWは基本的には大学が講義資料などを無料で公開しているものです。
MOOCとは違って特にスケジュールを設定されていたり、課題を提出したりといった管理はされずに自分のやりたいように学習を進めることができますが、分からないところがあっても自分で解決して進めていく必要があり、MOOCよりは少しハードルが高いです。また、通常修了証なども発行していません。
OCWで見られるような大学の講義をベースにしてMOOCとして再構成されているパターンも多いです。
MOOCになっていないような講義の内容も見ることができたりするので、特殊な内容の講義を探している場合は役にたつことも多いです。
MIT OCW
おそらく世界で一番有名なOCWで、大学で学ぶようなことであれば大体なんでも出てきます。
すべてに講義動画があるわけではないですが、何か学びたいものがあるときにとりあえず見てみても損はしないと思います。
MIT Open Learning
MITが提供している学習マテリアルは、edX上の講座やMIT OCW、また独自運営のMOOCであるMITx Onlineも含めてこちらのMIT Open Learningからアクセスすることができるので、興味がある方は覗いてみてください。
Stanford Engineering Everywhere
Stanford Engineering Everywhereではコンピュータサイエンス、AIなど9つの講義を無料で閲覧することができます。
ここで公開されているマテリアルは、リンク先に以下の記載があるように自由に使用することができます。
Stanford encourages fellow educators to use Stanford Engineering course materials in their own classrooms. A Creative Commons license allows for free and open use, reuse, adaptation and redistribution of Stanford Engineering Everywhere material.
Open Yale Courses
YaleのOCWで、いくつかの入門レベルの講義を公開しています。この記事の公開時点では 40のコースが登録されていました。
OpenLearn - The Open University
The Open University(イギリスの公立大。日本でいう放送大学のように遠隔教育メインの大学)の提供する無料の学習プラットフォームで、とても幅広い科目をカバーしています。
学習の成果としてデジタルバッジや参加証明も取得可能で、モチベーションの維持にも役立つかもしれません。
OpenLearn Create
OpenLearnの姉妹サイトで、個人や組織が自由に無料のコースを開講できるプラットフォーム。本記事投稿時点では491のコースが登録されていました。
Academic Earth
これは一般的なOCWとは違いますが、内容をみると大学の講義マテリアルを集めたプラットフォームといった感じで、感覚としてはさまざまな大学のOCWの動画部分を一つの場所にまとめたといったものだったのでここに記載しています。
ちなみに僕はこのサービスについて何度か名前を目にしたことはありましたが、サイトを訪問したことはありませんでした。
このサービスにはログインして学習記録を管理する機能もありませんし、講義は基本的にYouTubeのリンクになっています。
YouTube上にどんな講義があるのかを大学や科目別に調べることができるので、目録として使うには便利そうです。
自分の知らない大学の講義などは直接検索して辿り着くのは難しいでしょうし、意外な発見があるかもしれません。
その他
OCWは世界中の大学が提供しているので、上記以外でも興味のある大学 OCW
で検索してみると、受講できる講義が見つかるかもしれません。日本の大学のOCWだと日本語で講義を受けることができるのもいいですね。以下に一例を挙げておきます。
UTokyo OCW
東大のOCW
京都大学OCW
京大のOCW
筑波大学オープンコースウェア
筑波大のOCW
NPTEL (National Programme on Technology Enhanced Learning)
インドのIITs(Indian Institutes of Technology)とIISc(The Indian Institute of Science)の講義を中心に受講できるOCW
國立清華大學開放式課程
台湾の国立精華大のOCW。中国語が中心だが、英語のコースもある
臺大開放式課程
台湾の国立台湾大学のOCW。中国語
おわりに
今回はMOOCとOCWについて、本当に一部ですが紹介してきました。次回はIT関連に特化したサービスについて書こうと思います。